Aviencloudが表現する音楽×イラストの共鳴
YouTube上で異彩を放つ音楽チャンネル「Aviencloud(アビエンクラウド)」。正体も所在も謎に包まれたこのチャンネルは、音楽とイラストの組み合わせによって私たちに新しい出会いを届けてくれる。謎多きアビエンクラウドと、YouTube上の音楽プロモーションチャンネルの魅力を解明する。
目次
Aviencloudとは
Aviencloud(以下アビエンクラウド)とは主に音楽配信を行うYouTubeチャンネルだ。その特徴は、音楽が流れる背景にイラストが掲載されているところにある。アビエンクラウドの正体は不明だが、YouTube上の情報を辿るとどうやらドイツが拠点のよう。前述の音楽とイラストを組み合わせた動画配信はもちろん、24h365日彼らがチョイスした音楽を流す”Aviencloud Radio”と銘打ったライブ配信も行っている。
紹介される楽曲は、「nu disco, funk, electronic, soul, r&b, ambient, chill, lofi hip hop, jazz, hip hop, jazz hip hop 」とチャンネルに明記されているが、ダンスミュージックからヒップホップ、ドラムがどこどこ鳴るフューチャーベースから落ち着いたlo-fiな曲まで、本当に様々である。その雑多さが一つの特徴と言っても良いくらいだ。
最も再生されている『Mihka! X Kyoto Black – Kodokushi (孤独死)』のような、「アビエンクラウド」という名前がいかにも醸し出す未来感漂う曲から。
かと思えば、lo-fiを思わせる落ち着いた楽曲まで。まずはアビエンクラウドの雑多さを感じてみて欲しい。
Aviencloudのおもしろさ
集まるイラストと楽曲
現在のアビエンクラウドのおもしろさは、その楽曲とイラストの収集方法にある。
アビエンクラウドは、GoogleフォームやDiscordなどの様々なフォーマットを駆使し、常にアーティストから楽曲とイラストを募集している。そしてアビエンクラウドは、提出された音楽と、提出されたイラストを組み合わせ、YouTubeにアップする形をとっている。アビエンクラウド自体はハブに過ぎず、集めた音楽とイラストの中から、最適な組み合わせを提示する。
そして、楽曲やイラストを提出してくるのは彼らの選ぶ音楽のセンス、イラストのセンスに共感した人たちである。アビエンクラウドが選ぶ対象も、そうした彼らのセンスにつられて集まった人たちが作ったものとなり、そうして「Aviencloud」という一つのカルチャーの集合体が生まれていくのだ。
Aviencloudの歴史
2013年から活動を始めているアビエンクラウド。しかし、初期の動画にイラストはなく、音楽をただあげるだけのチャンネルであった。当時はアップされる楽曲もEDM色が強いものがメイン。2015年から音楽とアニメのイラストを組み合わせるようなるが、ここで使われているイラストは既存のアニメから引っ張ってきたものも多く、非常にグレーゾーンである。
過去から再生回数の多い動画を振り返ってみると、当初からあげていたEDM寄りの音楽ではなく、むしろlo-fiやfuture bassの音楽を軸に勢力を拡大していったことが分かる。アニメとlo-fiの関係は過去の記事でも述べたが、ここにもアニメイラストとlo-fi音楽の相関が見て取れる。
そうして徐々に規模を拡大していき、今では応募によって集めた音楽とイラストによってチャンネルを運営している。
アビエンクラウドに問われるのは、彼らがどんな音楽を用意し、それにどのようなイラストを組み合わせるのか、というセンスだ。誰がアビエンクラウドを運営しているのか、どのようなメンバーで構成されているのかは謎に包まれていることから、彼らがそのセンスと審美眼だけで規模を拡大していったことに疑いの余地はない。そしてそのセンスだけで人気を獲得した点で、アビエンクラウドは非常に稀有な存在と言えるだろう。
Apple MusicやSpotifyなどのサブスクリプションに加入していれば、あなたの好みに合わせたオススメの音楽を向こう側が提示してくれる。もちろんそうした出会いが感動の出会いになる可能性は大いにあるし、あなたの好みに合わせているのだから好きな音楽と出会える確率は高い。
ただそれだと自分の好みが限定されていき、世界が狭まってしまうように感じるのもまた事実。こうした他人のセンスでキュレーションされたチャンネルはあなたに世界を広げる出会いを与える良いきっかけになるのではないだろうか。ありとあらゆる「あなたへのオススメ」に疲れたら、こうしたチャンネルを覗いてみるのも良いかもしれない。
他にもYouTube上には、こうしたセンスのみで勝負するチャンネルは存在する。いくつか紹介したい。
センスで勝負するチャンネルたち
i’m cyborg but that’s ok
正体も所在も不明だが、世界中にファンを持つチャンネル「i’m cyborg but that’s ok」。彼(彼女)が好む音楽と、映画の映像を組み合わせて動画を制作している。日本の映画も使われることが多く、日本の風景に海外の音楽がどことなくマッチしているのは見ていて楽しめるはずだ。
Waifu Wednesdays!
Waifu Wednesdaysは、J-POP・Future Bass・Future Funk・EDMなどのジャンルの音楽を欧米のオーディエンスに広めるためのプロモーション・ネットワークです!
Waifu Wednesdays! Youtube 概要欄より
主に日本の音楽を欧米に広める目的のチャンネルが「Waifu Wednesdays!」である。Kawaii Future Bassや、Kawaii Trapなど日本の「カワイイ」が世界でも人気だが、じゃあ実際そのカワイイってどういう雰囲気なの?というのを感じられる場所になっている。
最後に
「世は大コンテンツ時代」と言わんばかりに音楽から映像作品、絵やイラスト、溢れるように湧き出し、そして今後もそれは増え続けていくだろう。ただ、だからこそ大事なことは、片っ端からあらゆるコンテンツを網羅し自分にとって最適なものを導き出すことではない。自分を知らない世界に連れていってくれる引き金を見つけることである。
愛をもって育まれた他人の世界は、そうした引き金になる可能性に溢れている。
そしてそんな引き金の一つを、ダンチブロードキャスティングも担うことが出来れば、これ幸いである。