AMVが秘める可能性、著作権を乗り越え拡大する世界

AMVがYoutube上でひそかな盛り上がりを見せている。しかし、AMVが二次創作である以上、この盛り上がりには必ず著作権という問題がつきまとうのも事実だ。そこで、AMVが著作権を乗り越えその世界を拡大していくことは出来るのか、今後どのような可能性を持っているのかを検証していきたい。

目次

Illustration by エノシマナオミ

著作権との格闘

AMVの広がりは現行の音楽シーンにも侵食を始めている。

これは多くのアジアンで構成され今も世界中にその勢力を拡大し続けるレーベル「88rising」に所属するインドネシア人のラッパー、Rich Brianが楽曲のリリース前に公開した動画だが、様々なアニメや映画のシーンをサンプリングして作られている。そして、この動画が生まれた背景にはAMVの存在があるだろう。これだけ色々な素材が雑多に組み合わされただけなのにどこか惹かれてしまうことには、二次創作、そしてAMVの持つ力を評価する他ない。

しかし、このビデオは彼が所属するレーベルである「88rising」の公式チャンネルではなくRich Brian個人のチャンネルで公開。あくまで商用目的ではないことを示すための行為だと思われる。また、「これは著作権的に大丈夫なの?」とコメントが寄せられていることからも、AMVと著作権問題のスレスレをいった動画であることが分かる。

2018年にはEUで著作権指令の改正案が可決され、今後AMVがその影響を受ける可能性も少なくない。ただ、現在のAMVメーカーたちの技術とその進化を見ると、それがYoutube上やコミュニティサイト内でひっそりと暮らしているのは少しもったいない気がする。

この動画のタイトルは「You can (not) avoid copyright(著作権からは逃げられない)」AMVメーカーたちの間でも、度々こうした冗談が繰り広げられていたりする。

そこで、AMVが個人のyoutubeチャンネル以外でどのように拡大をしているのか、またAMVの影響を受け継いで拡大するものがないのかを追っていきたい。その中で、AMVが獲得し得る可能性はどこにあるか。開拓していこう。

オリジナルコンテンツへの還元

ゲームやアニメ、さらにはブランドのプロモーションにAMVの要素を持ったものが使われるケースは非常に増えている。

これは『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ』のプロモーションでyoutube上に公開された当ゲームのオープニングムービーだ。

この動画が公開された2016年はクオリティの高いAMVが一気に世に出始めた年でもある。キングダムハーツシリーズ過去作のOPと比較しても音楽と映像の融合に大きく進化が現れており、その背景にはMAD、そしてAMVの進化と同じ波長がある。

こちらはGAP,2019年ホリデーシーズンのキャンペーン動画だが、これは完全にAMVである。『少年アシベGO!GO!ゴマちゃん』のAMVに、現在注目を集めるアーティスト、中村佳穂のJITTERIN’JINN『プレゼント』をサンプリングしたオリジナル楽曲が使われている。

上記のものに共通していることは、ビデオに応じて「オリジナル楽曲」が制作され、用いられていることだ。アニメへの愛を表現するため、AMVメーカーたちがアニメと音楽を融合させたように、彼らはゲーム作品やブランドの世界観を拡大するためにオリジナルの音楽を作り、用いる。

オリジナルキャラクターの創造

AMVには、アニメへの愛を表現するAMVから、音楽の良さを表現し拡大するためのAMVが生まれ始めるという流れがあった。

先ほどの「オフィシャルコンテンツへの還元」がゲームやブランドの世界観を拡大するために音楽を用いているとしたら、逆に、音楽の魅力を拡大するためにアニメやゲーム的世界観を用いるという流れも存在する。

ゴリラズ(gorillaz)の先見性

ブラー(blur)というバンドのボーカルであったデーモン・アルバーンがブラーとは違う音楽性の楽曲を制作する時に行ったのが、自分ではないキャラクターを作りあげ彼らに歌を歌わせるということだ。コミック作者のジェイミー・ヒューレットと共にキャラクターとストーリー、世界観を作り上げた。

音楽の可能性を拡大するためにオリジナルのキャラクターを作ってしまうというやり方は、好きな音楽の魅力を拡大するためにアニメの力を借りてAMVを制作するという流れにとても似ているし、それは初音ミクや現行のVtuberにも通ずる部分がある。ただ、ゴリラズのデビューが1998年。彼らの先見性には脱帽しかない。

カシミア・キャットが作り上げた猫

EDMの流行と共に頭角を現したノルウェー出身のDJ、カシミア・キャット(Cashmere Cat)。

2019年、彼はアルバム『PRINCESS CATGIRL』の発表と共に、princess catgirlという猫のキャラクターを作り上げ、楽曲のMVに登場させた。

特筆すべきは、そのキャラクター像だ。見たことがないのに、我々がこのキャラクターにどこか愛着と懐かしさを覚えるのは、このキャラクターからプレイステーションのような過去に遊んだことのあるゲームの世界を感じるからだろう。CGの世界観とそれでいてどこか荒さの残された部分は、プレイステーション初期を思い出させる。さらに、princess catgirlが明らかに初音ミクをモチーフにした色使いであることもその影響を感じさせる。

AMVの魅力の一つは、我々の想像力を刺激する力があることだ。アニメに存在する膨大な話数、大きな世界観やストーリーの中から抽出し編集して作られたAMVは、私たちがアニメに抱くノスタルジーや想像力を掻き立てる。しかし、背景にある世界に馴染みのないオリジナルキャラクターでそうした力を生み出すのはとても難しい。

ゴリラズは楽曲と共に膨大な世界観とストーリーを作り上げていくことで私たちの想像力を刺激してきた。これがある種、力技であるのに対し、ゲームという「ハード」自体がすでに持っていた世界観を踏襲しキャラクターを作ることで、世界中の人がどこか他人とは思えないキャラクターを作ったことは、一つの発明であったのではないだろうか。

AMVの未来

やはり、現状の動きを考えるとAMVがAMVのまま堂々と世の中に出ていくことは難しいようであり、どこかでオリジナル性を獲得してから登場することになるのかもしれない。しかし、AMVが育んできた世界観に手が生え、足が生え、あなたの元にやってくる日はそう遠くないはずだ。その足音は聞こえている。

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